着物のプロ、悉皆屋(しっかいや)さんとは?

悉皆屋さんってご存知ですか?着物が身近になると、聞こえてくる言葉ですが、これは着物に関する様々なメンテナンスを丸ごと引き受けてくれるプロの事です。悉皆屋さんは、江戸時代に大阪で生まれたと言われています。大阪で着物の染めや洗いの注文を受け、その技術がある京都の専門店に取り次いでいったことが、やがて自ら着物の相談事を引き受け、対処するようになり、そんなお店を「悉皆屋」と呼ぶようになったとか。 私は生まれも育ちも関東なので「悉皆屋さんは関西中心に活動している職種」と思っていました。それほど「悉皆屋さん」は、知らない言葉だったのです。私の身近にある着物関係のお店は「呉服店」そして「着物専門のクリーニング店」「洗い張り・染め物店」「仕立て屋」などなど。実はこれらが悉皆屋さんであると最近知りました。 悉皆屋さんとは、着物メンテナンスの総称で、「悉皆屋」という名前が付いているお店はほとんど無い・・・それが悉皆屋さんなのです。

悉皆屋さんに着物のリメイクをお願いしましたが・・・

親しくしている呉服店から「今度、お店に悉皆屋さんが来るので、困り事があったら相談してみませんか?」との連絡が入ったのです。実は、扱いに悩んでいる母の着物があったので、さっそく母と一緒に行ってみました。 持って行ったのは、その呉服店で十年以上前に買った訪問着です。 相当良い品のようですが、母は「生地が厚くて重いため、高齢となった今はもう着るのが大変。生地はしっかりしているので着物用のコートに仕立て直したい」と言います。悉皆屋さんでは、クリーニングや染め直しの他にも羽織やコートに作りかえることもしているという事なので、お願いすることにしました。 呉服店の担当者に「これをコートに作り替えて欲しい」と伝えると、「えっこれは●●先生の作品ですよね。これをコートに?勿体ないですよ」とのこと。でも母は「身長も小さくなってきたので、今まで持っていたコートも長すぎて着られなくなったの。新しく作るなら、この訪問着を作り替えても良いかと思って・・・着ない方が勿体ないし」と言います。 取りあえず担当者と一緒に、悉皆屋さんのブースに行きました。悉皆屋さんも持ってきた着物を見て「あっ、これは●●先生の訪問着ですね。とても良いものですが・・・これをコートですか?」と着物を色々とチェックして「特に汚れやシミはないようです。これをコートというのは、止めた方が良いですね。うちではやりません」と言われてしまいました。

なぜコートに仕立て直しが駄目?

お気に入りの着物をコートや羽織に仕立て直すということは、良く耳にします。どうして今回は駄目なのでしょうか?話を聞くと、和服の仕立て方が問題のようです。 女性の着物の場合は、おはしょり分があるため、実際の身長よりも着丈は長めになっています。でもコートにはこの長さは必要ではないのです。コートに仕立て直した場合は、裾模様がある箇所はカットとなるので、勿体ないと言われました。 「着物の生地は繋がっています。前身頃にある裾模様をいかそうとすれば、肩にある模様は後身頃にずれて、後の裾模様は無くなってしまいます。そもそもそんな事をしたら、訪問着にある絵羽模様(縫い目をまたいで繋がっている、絵画のような模様)はメチャクチャになってしまうのです。」「羽織はもともと羽織用の、コートはコート用の生地で仕立てるのが基本。着物をコートに仕立て直せるのは、小紋や無地だけです」とのことです。 母が「肩で後身頃と前身頃を繋いで縫えば、肩模様は無くなっても、裾の絵羽模様は大丈夫ですよね」と言うと「着物は洋服とは違います。肩を縫うなんて仕立てはありません」と駄目押しをされ、この話は無くなりました。自宅に帰って、手持ちのコートを確認すると・・・確かに肩の縫い目は一切ありません。なるほど、これが着物の仕立てなんですね。

まとめ

訪問着や留袖など、豪華な絵羽模様があるものを、他のアイテムに仕立て直すことは出来ないと言う事が分かりました。「どうしてもコートを作りたいなら、洋服のリメイクをしてくれる所ならやってくれるかも知れませんが、おすすめは出来ません。 大切に保管して、誰か他の方に着ていただいた方が良いですよ」と言う言葉は、損得だけで仕事をしない、着物を愛する悉皆屋さんのこだわりなのでしょう。色々なことに対応できる悉皆屋さんは、着物ファンにとっては有り難い存在と教えていただきました
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